横井一江のブログ "jazz,improvised music...and beyond"


by kazuey1113

『平岡正明/毒血と薔薇』

c0098087_21143969.jpg国書刊行会というとセリーヌ全集とか幻想文学を出版しているオカタイ出版社だとずっと思っていた。そこから音楽本、しかも平岡正明の本が、それもコルトレーンの命日に世に出されるとは。それもこれもユリイカ2007年2月号『特集・戦後日本のジャズ文化』の編集者であった萩原玲子さんが国書刊行会に入社したから、だった。しかし、少なくとも『毒血と薔薇』というタイトルと装丁は、この出版社にふさわしいな、とも思う。澁澤龍彦の著書と言われても納得しそうなタイトルだが、なるほど『血と薔薇』と繋がっていたのか。

平岡正明というと遠い昔、『ジャズ宣言』や『ジャズの他に神はなし』に目を通した記憶がある。植草甚一は好きだったが、日本人のジャズ評論家が書く本はたいがいつまらないので元来読まなかったから、油井正一の本などと共に日本人の書いたジャズ本の中で読んだ数少ない本の中にはいるのだろう。

『毒血と薔薇』はジャズ論集だが、なんといっても書き下ろしの表題作に限る。それはコルトレーン論なのだが、桂枝雀の世界と絡みあい、縒り合わされていく。「毒血と薔薇」というタイトルとコルトレーンと枝雀、その組み合わせの妙。それがしっくり嵌っているのだ。独特の語り口、リズム感、切れ味といい、平岡正明節大いに健在である。その強靱な筆力衰えを知らず、というところか。趣味嗜好は違うし、好みの文体というわけでもなく、異論、反論もちろんある筈なのだが、不思議とイッキに読んでしまった。少なくとも70年代を知るものとしては、時代の感性を逆回しにされた気分である。男気を感じさせる文章を書く音楽評論家などもはや絶滅危惧種だ。その気骨ある文体がなんとも懐かしい。

かつて、ン十年前はあちこちのジャズ喫茶で7月17日にはジョン・コルトレーンのLPをかけていた。それも遠い昔である。その日はコルトレーンの命日であるだけではなく、ビリー・ホリデイの命日でもあることを付記しておこう。
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by kazuey1113 | 2007-07-24 22:28 | informaion