横井一江のブログ "jazz,improvised music...and beyond"


by kazuey1113

『富樫雅彦・佐藤允彦/エマージュ』、『矢沢朋子/仏蘭西幻想奇譚』

少し前になるが、ライナーノートを相次いで書いた。全く異なる内容の作品なのだか、その紹介を少し。

c0098087_7103871.jpgエマージュ』(Studio Songs)は、富樫雅彦が演奏活動を断念する前年(2001年)に、佐藤允彦とエッグ・ファームで行ったデュオ・コンサートのライヴ録音。佐藤のファースト・アルバムであり、二人の初共演盤である『パラジウム』(1969年録音)に収録されていたタイトル曲《パラジウム》と《スクローリン》に挟まれるように富樫作品が演奏されていたので、その2曲を聞きくらべることに。ジャズという語法の中で最大限の表現をしていた1969年録音と、その縛りから脱却して自由にイマジネーションを広げながら空間構築している2001年録音に、二人の音楽家が辿った軌跡と時代の変化を感じた。富樫・佐藤デュオのような即興性の高い演奏はライヴにその真価が表れる。小ホールながらも音響のよいエッグファームでのライヴ録音がCD化されたことは嬉しい。

c0098087_7105564.jpg現代音楽のスペシャリスト、矢沢朋子の最新録音『仏蘭西幻想奇譚』(Geisha Farm)は、幻想的・神秘的傾向を持った世紀末芸術をテーマとして取り上げたコンセプト・アルバム。アルヴォ・ペルトの宗教的で静かな《アリーナのための》から始まり、一ひねりある選曲でサティ、ドビュッシー、スクリャービンなどの作品を取り上げている。ラヴェルの「夜のガスパール」も《絞首台》のみを取り上げ、その後にトリスタン・ミュライユの《マンドラゴール》(矢沢が委嘱、世界初演)を聴かせるという絶妙のプログラミング。彼女の演奏を聴きながら、すごく上手いジャズ・ピアニストがスクリャービンなどを弾いているような心持ちになった。矢沢はクラシックの演奏家にしては類希なリズム感、そしてグルーヴ感をもつピアニストだからだろう。
また、録音のマイク・セッティングなどに工夫を凝らし、曲によってはポストプロダクションを行っているが、レディオヘッドの《Kid A》を自らアレンジして演奏したり、テクノが好きという矢沢の録音に対する感性が、そこによく表れている。パッケージ・デザインも凝っているので、ダウンロード配信にはないモノとしてのCDを手に取る喜びがあると思う。

追)レコ発記念ミニライブ&サイン会
日時:2012年 11月9日(金) 19:00開演
会場:タワーレコード渋谷店 7F
問い合わせ:タワーレコード渋谷店 Tel: 03- 3496 – 3661

矢沢朋子インタビュー @jazztokyoコチラ>>>
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by kazuey1113 | 2012-10-03 08:24 | new release