横井一江のブログ "jazz,improvised music...and beyond"


by kazuey1113

「女子ジャズ」って何?

先月のことである。忙しい最中にジャズ批評から送られてきたアンケートを依頼する手紙の中に、「今年は女子ジャズ元年で…」とあった。女子ジャズ???映画「スウィング・ガールズ」がヒットしたのは数年前であるが、女性がジャズを演奏するのがブームになっているのか???気になったのでググってみた結果、それは女性向けのジャズガイド本『Something Jazzy』出版とタイアップして、タワーレコードが行った女性をターゲットにした「聴き方」を提案するキャンペーンからきたものであることがわかった。そしてそこに、セレクトショップの発想があるなと思った。

考えてみれば、CDを買うのはネット通販ばかり、それもアマゾン以外は海外やマイナーなディストリビューターだったので、このような現象が起こっていることすら知らなかった。たまにはCDショップにも行かないといけないな、と少々反省。

このキャンペーンについて書かれた日経トレンディの記事(コチラ>>>)などを読んで知ったのは、レコード業界の人たちは女性(特にF1)にジャズCDを売りたいとは思っていても、これまでこのような切り口があることに全く気がついていなかったということ。このようなキャンペーン方法は、女性をターゲットに商品を販売する時の定石で、それもただやっただけでは駄目なので、女性達のココロを掴むためにみんな知恵を絞っているのである。それに気がつかないとは、いかに業界人が「音楽が好き」な人たちの集まりで、一般的なビジネス感覚に欠けていたのかということだ。そこには少なからぬ甘えの構造があるように思う。

私自身は、きっかけはなんであっていいと思っているので、「女子ジャズ」からジャズを聴き始めた人たちのうちの数パーセントでも表層的なブームが去った後も日常的に音楽を楽しむようになってもらえれば嬉しい。それは、評論家・ライターや業界人のこれからの仕事にもよるだろう。オジサン方も少々発想転換すべきである。

しかし同時に、「女子ジャズ」は日本的な現象だな、とも思った。おひとりさまでもカフェには行くけれど、コンサートやライブでは(コアなファンは例外として)そのような人は少ない。「個」が確立していない日本ならではの受容のあり方が透けて見える。音楽がこのような紹介をされることは欧米ではあるのだろうか。「かわいい」という日本人女性特有の価値観にしても、ヨーロッパに住む人には奇妙なものに映るだろう。そこにはいつまでも大人になりたくない、大人(オバサンやオジサンではない)になれない日本人も見えてくる。

「女子ジャズ」でジャズCD購買層が増えたとしても、それが現在進行中のリアルなジャズシーンの追い風となるかどうかはまた疑問だ。コンサート/ライブに行くには、ジャズCDを買うのとはまた別の動機付けが必要になってくるからである。上手く「女子ジャズ」ファンをターゲットにプロモーション出来るかどうかが決め手となるだろう。

こんなことを書くと、それはメインストリームのジャズの世界のことでしょ、そんな広告業界的なやり方はクリエイティヴな音楽活動には無縁の世界だと言う人もきっと多いだろう。しかし、方法は違うにせよ、潜在的なリスナーをいかに掘り起こすか、いかにマーケティングをしていくかを考えていく必要性があることは確かなのである。ワイドレンジで物事を見れば、さまざまな事例が教えてくれることがあるだろう。このようなことは音楽関連書籍を読んだり、音楽関係者と話をしているだけではひらめかないような気がするが…。

個人的には「女子ジャズ」という現象はクリティカルに見てしまう。しかし、好き嫌いはともかくとして、それによって改めて気づかされたことがあったことは確かである。
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by kazuey1113 | 2010-12-18 13:34 | misc.