横井一江のブログ "jazz,improvised music...and beyond"


by kazuey1113

ECM Catalog

c0098087_23313429.jpg私も少しだけ執筆協力した『ECM Catalog』(東京キララ社)が出版された。ECM創立40周年(設立1969年)に向けて企画された書籍で、ECM/JAPO他でリリースされたすべての録音物のジャケット写真(カラー)、録音・制作データに加え、全作品に11名の執筆者(稲岡邦弥、相原穣、原田正夫、堀内宏公、今村健一、大村幸則、岡島豊樹、須藤伸義、多田雅範、横井一江、悠雅彦)が紹介文をつけている。監修はMr.ECM Japanといっていいだろう、『ECMの真実』の著者でもあり、jazztokyo編集長の稲岡邦弥。当初はECMシンパの5名でスタートしたが、途中から助っ人として私を含めた6名が参加することになった経緯がある。

ECMは70年代以降のジャズを語る上で重要なレーベルのひとつだろう。私のようなECMファンでもECMアーティストの誰かのファンでもない者でもやはり一目置くかざる得ない、どのようなアルバムをリリースするのかは把握しておかなければならないレーベルなのだ。一年に数枚はこれはと思う作品があるからである。

そして、クロノジカルに並んでいるそのリリースを辿っていけば、その時々のジャズとその周辺の音楽のトレンドの推移、それもヨーロッパでの受容というフィルターを通して透視できる。それは、キース・ジャレット、ヤン・ガルバレク、パット・メセニーのようなECMスターのアルバムよりも、カタログに名を連ねている済済多士が録音したアルバム群から浮かび上がってくるのだ。

ジャズにおけるメジャー・レーベルといえば嫌がおうでもブルーノートの名前がまず浮かぶ。ブルーノートがアメリカでのメジャーならば、ヨーロッパのそれはECMといっていいだろう。奇しくもその両方共ドイツ人が設立したレーベルである。ブルーノートのアルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフはベルリン生まれ。昨年幾つかのジャズ祭でECM40周年企画が行われたが、ベルリンジャズ祭だけはブルーノート設立70周年企画だったのはそういう理由からだ。だが、ベルリンにはフリーミュージックではFMPがあったが、ジャズ・レーベルとしてはこれはというものはない。なのにミュンヘンには、なぜかECMとEnja Records Matthias Winckelmann、Enja Records Horst Weber、Winter&Winterいうヨーロッパでも主要なジャズ・レーベルが至近距離にある。ハンス・ゲオルグ・ブルーナー・シュヴェアのMPS(拙ブログ記事はコチラ>>>)も州は違うが南ドイツだ。音楽シーンは北のほうが活気があるが、レコード制作は南がいい仕事をしている。それがなんとも不思議である。

話は脱線したが、ECMにはアメリカ、ヨーロッパなど国籍を問わず実にさまざまなミュージシャンが録音しており(これはふたつのEnjaにも言える)、歴史的な作品も少なくない。そしてまた、フリー系も含め今日的なアプローチをするミュージシャンの作品も多い。音楽的にも多様で質も総じて高く、まさに「Play Your Own Thing」なアルバムが並んでいる。『ECM Catalog』は、ヨーロッパ・ジャズのファンだけではなく幅広い音楽ファンにとって格好のディスク・ガイドとなるだろう。


追)稲岡氏からのメールによれば、Mr.ECM Japanは彼ではなく、LP/CDで完全コレクションを達成した月光茶房の原田正夫さんと堀内宏公さん(彼と多田雅範さんのサイト:musicircusでディープな関わりを見せる)のお二人とのこと。
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by kazuey1113 | 2010-07-11 01:08 | informaion