横井一江のブログ "jazz,improvised music...and beyond"


by kazuey1113

フリージャズと世相

よく言われることだが、フリージャズは60年代という時代の空気を映し出している。それはアメリカだけではなく、ヨーロッパにおいてもそうだ。しかし、ヨーロッパのフリー・ジャズもそれぞれお国柄が出ている。なかでもパワープレイが際立っていたのはドイツ。ブラック・パワーという言葉があるが、それになぞらえてホワイト・パワーとマイク・へフリーが書いていたのでなるほどと思った。

なぜドイツのフリー・ジャズが暴力的な表現ともいえるパワープレイだったのか。それには敗戦国だったドイツの国情が反映されていることに、ペーター・ブロッツマンと話をしていた時に気がついた。戦後ドイツのアデナウアー政権は、ナチズムから大量消費社会へとドイツを導いた。しかし、教育の場では1933年以後のドイツの歴史について教わらなかったのである。しかも、家庭でも親の世代に聞いても口を噤んで答えないし、その世代の感心は物質的な安定だったことに、若者は不満を募らせていたのだ。

戦後世代には、戦争はあるべからずものという考えがあったので、ドイツの再軍備は大いなる問題だった。そして、1962年には「シュピーゲル事件」があった。ドイツの雑誌シュピーゲルに掲載れた防衛政策につての記事は、シュトラウス国防大臣の疑惑の存在をにおわせたものだった。シュトラウスはその記事を書いた記者を逮捕し、シュピーゲルを捜索したのである。この行為が非難されたシュトラウスは結果的に辞任することとなる。

その後のキージンガー首相(1966-1969)の時期も、ドイツの学生運動の中で反軍思想は特別の位置を占めていたようだ。運動はアメリカのベトナム戦争反対の声と相まっていったと考えられる。

そんな国情とドイツならではの世相がフリージャズのエネルギーを放出するようなパワープレイの背景にあったのだ。
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by kazuey1113 | 2009-01-19 08:56 | misc.